アパートやマンションの名前の入った看板は、『銘板』と呼ばれています。アパート・マンションの顔とも言うべき銘板は、建物自体の印象の向上にもつながる重要な部分のため、デザインや設置場所にはこだわりたいという方も多いのではないでしょうか。
自分のイメージ通りの銘板を作製し、適切な場所に設置するには、デザインや取り付け場所によってどのような印象を見る人にもたらすかを知っておくことが大切です。
アパート運営の最初の一歩である銘板選びを失敗しないために、役立つ知識をご紹介していきます。
目次
アパート用の看板製作で使われる素材や加工方法を選択する
石や金属、木材など、銘板に使われている素材は色々な種類があり、その数だけ特徴や適したデザインが存在します。アパートやマンションの印象を決定付ける銘板のデザインを後悔しないよう決めるためにも、まずはそれぞれどのような性質を持っているかを確認しましょう。
また文字を入れる加工の方法でも銘板の印象は大きく変わります。複数ある加工方法のうちどれを選ぶべきか、特徴を把握して吟味しましょう。
アパート・マンション看板の銘板に使われる素材
アパートやマンションの銘板にはさまざまな素材が使われており、それぞれ特徴のある性質を持っています。
◆石
どっしりとした重厚感と堅牢さ、何より風合いのある見た目の美しさが特徴です。石は結晶の集合体であるため、切り出し方や掘り口によって色々な筋模様、『石目』を見せます。自然物ならではの、一つ一つの銘板が異なる美しい石目を持つことも大きな魅力です。
天然石、御影石、大理石など種類を選ぶことができ、それぞれ異なる性質を備えています。磨けば光沢を放ち、荒く削れば風格のある仕上がりと、多彩な表情を得られます。また長年の風雨にも耐える石の耐候性は、銘板の素材として重要な性質です。
◆金属
加工がしやすい金属製の銘板は、形状に自由が効きやすいためさまざまな形をつくることができます。厚い金属板から文字だけを切り抜いて作ったユニークな形状や、繊細な飾りも自由自在。研磨された金属銘板は他とは異なる独特の高級感を醸し出します。厚横幅の薄い金属プレートをエッチング加工して作る銘板は費用を抑えやすいという特徴もあります。
一口に金属といっても石同様多くの種類があり、デザイン性や耐久性から適切なものを選べます。サビに強いステンレス、風格豊かな銅、高級感のある真鍮、シックで都会的な雰囲気を醸すアルミなど、バリエーション豊富な材質が可能とするデザインの自由度は、他にはない金属銘板ならではの魅力です。
◆陶器
セトモノやテラコッタ、セラミックと呼ばれる陶器製の銘板も根強い人気を誇っています。陶器特有の自然で温かみのある肌触りはデザイン性を引き立てるだけでなく、雨風に強いという性質も見逃せません。歴史を感じさせる落ち着いた風合いは、和風・洋風問わず様々な建築に適合し、レンガにも漆喰にも合わせることができます。建物の顔になる銘板部分の材質として、格調に劣らぬ調和を見せてくれます。
◆木
木製の銘板も昔ながらの安定した人気を持つ素材です。ヒノキ、ケヤキ、黒檀、イチイなどの銘木は木製であっても長年の風雪に十分耐えうる耐久性も兼ね備えています。
デザインにおける木の魅力と言えばやはり一つ一つが違った表情を見せる美しい木目ではないでしょうか。歴史ある邸宅などの表札はもちろん、現代でも好まれるモダンで温かみのあるデザインに調和する銘木は、時を越えて愛され続ける銘板デザインの一つです。
◆人工大理石
樹脂を大理石調に加工した人工大理石も、銘板素材のニューカマーとして支持を集めつつあります。魅力としてはなんといっても価格の安さと加工のしやすさです。樹脂製のため、金型さえ作ってしまえば低価格・短納期で銘板を作製できるため、同一デザインのものを多く必要とする場合に適しています。
高い耐久性と軽量さを併せ持ち、着色性にも優れているため、さまざまな表情を容易に作り出すことができます。金属風、銘木風、アイボリー風、石材風といった他の素材の良さを取り入れたデザインを作るのに向いています。
◆ガラス
カットしたガラスに掘り込みやシート、レーザーなどで文字を入れた銘板です。涼しげで理知的な印象を持ち、角度によって変化する表情は見る者を飽きさせません。透明素材のため、上品さを醸しつつも取り付ける壁のデザインを損なうことなく溶け込めるという特徴を備えています。またガラスは耐候性に優れ、経年劣化をしにくいという性質も銘板の使用目的にマッチしています。
◆アクリル
ガラスに似た透明感を持つ樹脂製の銘板です。ガラス同様上品でクールな印象でありながら、軽量かつ頑丈で取り付ける場所を選びません。着色性にも優れ、ガラスの大きな魅力であるエッジの美しい緑色を再現したガラスアクリルといった素材も人気を集めています。
【加工によって魅力が変わる銘板】
素材だけでなく、加工の仕方によっても銘板は多彩に表情を変えます。銘板の魅力を引き出すポピュラーな加工方法を下記にご紹介します。
◆エッチング加工
主に金属の銘板に用いられる加工方法です。素材表面を特殊な薬品を使って腐食させ、削り取ることで文字分の凹凸を作り出すことができます。エッチングの大きな利点としては削り取る範囲を非常に精密に指定できることで、掘り込んだ文字が美しく仕上がります。耐久性に優れる点も重要なメリットです。多くの販売店では『ドライエッチング銘板』の名前で販売されています。
◆レーザー加工
レーザーを使って素材表面を掘っていく加工方法です。ガラスなどに白い文字を掘るほかに、下地に美しいヘアラインを掘り込むことで余計な反射を抑制し、表面に高級感を出すことができます。また文字の掘り込みの場合、漢字のような画数の大きい文字も小さくまとめることができ、後からの文字追加も容易です。
◆サンドブラスト加工
素材の表面に高速で砂を吹き付ける加工方法です。サンドブラスト仕上げは素材のツヤ消しに用いられることが多く、光沢のない重厚なデザインを作るのに向いています。文字部分だけを残して加工すれば、文字が浮き出るようなデザインを作り出すことも可能です。
素材と加工方法を組み合わせて素敵なデザインに
銘板の素材、加工方法ともに複数の種類があり、それぞれ組み合わせることで独自のデザインを作ることができます。建物の名前を文字のみで入れた銘板のほか、ワンポイントを付けたり、銘板自体の形を工夫することで、こだわりのデザインを表現できます。アパートやマンションの印象をガラリと変える銘板選びは非常に重要です。デザインを吟味して、目的にマッチした銘板を選びましょう。
効果的なアパート・マンション看板の設置場所
アパートやマンションに銘板を設置する場合、取り付け場所を複数の候補の中から選ぶこととなります。まずは、どのような場所に取り付けることができて、それぞれどんな効果があるかを下記に取り上げていきます。
また銘板の材質によっても適する設置場所は変わってくるため、一般的に合わせることの多い設置場所と銘板の材質の組み合わせについてもご紹介します。
設置場所による効果の違い
◆エントランス上部
アパート・マンションの玄関口となるエントランスのひさしの部分です。建物のまさに顔となるべき部分であり、抜群の視認性があります。遠くからでもその存在を認識できるため、そのアパートやマンションの根本となるテーマを銘板で表現することに向いています。
シックなデザインの建物であればステンレスやガラスの銘板がマッチしますし、モダンな雰囲気であれば陶器や木製の銘板が合うかと思われます。また風雨に直接さらされる場所であるため、銘板の耐候性には特に気を付けた方が良い設置場所でもあります。
◆エントランス内部
『館銘板』とも呼ばれています。扉やインターホンの傍に銘板を設置することで、来訪者に強く建物を印象付けることができます。また銘板に対する視点が近いため、比較的小型の銘板や緻密なデザインの銘板を設置するのに向いている場所です。
◆外壁
外壁への銘板の設置は、来訪者や入居者よりも通行人への印象効果が高い位置です。じっくりと見つめることは少ないため、大型のものや視認性の高い銘板を設置するのに適しています。またエントランス上部同様、建物全体のテーマを表現する銘板も有効です。
◆モニュメント
エントランスや前庭などに置かれるモニュメントにも銘板を取り付けることができます。モニュメントの存在感に負けず、それでいて雰囲気に調和する重厚な銘板を設置するとより効果があります。
◆植栽
敷地内に植栽がある場合、植栽の内部に銘板を取り付けることで調和したデザインを表現できます。植栽スペースの広さや建物の雰囲気を考慮して、銘板のサイズや材質は検討したほうがいいかもしれません。
壁付型銘板と自立型銘板の設置方法
壁に取り付けるタイプの銘板と、自立するタイプの銘板、それぞれの設置方法を簡単にご説明いたします。
◆壁付型銘板
まず土台となる裏板を壁に取り付け、ボルトなどで固定します。銘板の重量によって固定具の数やサイズは異なります。裏板が固定出来たら、銘板の裏側に取り付けられたビスで裏板を上下から挟み込むようにして取り付けます。
◆自立型銘板
地面や植栽にアンカーを打ち込み、支柱となるポールを立てます。ポールに裏板を取り付け、そこに銘板を乗せるようにして固定することで安定させます。
アパート・マンション看板設置と使用上の注意点
銘板に限らず不特定多数へ向けて看板を設置する場合、自治体の条例に定める『屋外広告物』として取り扱われる場合があります。お住まいの自治体によっては屋外広告物を設置するのに事前の申請が必要なこともあり、アパート・マンションに取り付ける看板が条例に違反していないかどうかを確認しておく必要があります。
またアパート・マンション用の看板を業者に依頼する際、どのような基準で選ぶべきかについてもご説明いたします。看板を長く使っていくために必要なお手入れの方法と注意点も知っておくと便利です。
看板取り付けの注意点
『屋外広告物』とは屋外で不特定多数の公衆へ向けて表示される掲示物のことを指し、一般的に看板全般が該当します。屋外広告物は広く大衆の目に触れ、街の景観や雰囲気の秩序に影響を与える部分が大きい要素でもあるため、自治体によっては制限が課せられ、掲示の前に行政からの許可が必要な場合があります。
屋外広告物の許可申請を行うにあたっては、看板デザインの図面や掲示場所の配置図を始めとした各種資料と申請書類を用意する必要があり、手続きが煩雑になりがちです。看板の製作を業者に依頼する場合、自治体への屋外広告物許可申請も併せて行ってくれる会社もあるので、信頼できる業者を探してそこに任せてしまうのが安心かつ確実です。
アパート・マンションの看板製作業者の選び方
アパート・マンション用の看板製作を依頼する業者を選ぶ際に、確認しておくべきポイントを下記に挙げていきます。
☑製作業者の施工事例や営業年数
看板製作の実績と経験、ノウハウはその会社の信頼度をはかる上で非常に重要になります。長年営業している会社であれば、それだけ経験豊富なプロが在籍している可能性が高いです。また自分が依頼しようとしている看板の材質や加工方法に対する実績が多い業者であれば、そのノウハウを使って効率良く適切な施工を行ってくれることでしょう。
☑建設業総合保険への加入の有無
建設業総合保険とは、保険各社の販売している、施工の最中や施工完了後に発生し得るさまざまなリスクに対応した保険です。保険への加入は、業務災害や事故による器物の破損などにきちんと備えていることを示し、信頼できる業者選びの参考になります。
☑屋外広告業登録の有無
上記の屋外広告物に関連して、広く公衆の目に触れる掲示物の製作を事業として行うためには自治体に屋外広告業の登録を行う必要があります。屋外登録業登録には自治体の審査があり、専門の資格の保有や教育を受けた担当者が在籍しているかどうかや、過去に営業停止処分を受けていないかなどを確認されます。したがって、屋外広告業登録がされている業者であれば、行政が営業を認めているため信頼性がある程度保証されているということになります。
☑屋外広告士や重機の取り扱いの資格の有無
屋外広告士とは屋外広告物の製作・施工に関わる知識や技術を有していることを証明する資格です。この資格を保有している担当者が在籍している業者であれば、品質面で信頼できる業者と言えます。また大型の看板や高所への取り付けには重機が必要な場合があり、重機の取り扱い資格を保有している業者なら安心して施工を任せられます。
☑看板製作の目的を把握し、考慮してくれる業者であるか
業者探しの際に電話口やメールで簡単なやり取りがあるかと思いますが、その際に看板を製作設置する目的をしっかり把握し考慮してくれる業者かどうかも重要なポイントになります。目的に沿って適切な施工の方法をアドバイスしてくれる業者を選びましょう。
☑明朗会計・見積り内訳の詳細な説明があるかどうか
業者から提示される施工見積りに不明な部分や後からプラスされる費用がなく、また詳細についてきちんと説明をしてくれるかどうかも大切です。どこにどのような作業を行い、その結果いくらの費用が必要になるのかは施工主側としても気になるところではないでしょうか。
銘板のお手入れ方法と注意点
銘板の材質によってはお手入れにも注意すべき点がいくつかあるので、素材別にお手入れ方法を下記にご紹介します。
◆基本知識
各素材に共通して、表面の汚れを拭き取るにあたり、まず使ってはいけないのが研磨材の入った洗浄剤です。特にエッチング加工の金属銘板ですと、表面を薄く削って文字を掘り込んでいる都合上、研磨剤で更に削ってしまうと文字が潰れてしまう可能性があります。同様の理由でナイロンたわしや金属たわしなどの表面にキズをつける可能性のある道具の使用も厳禁です。アルコールや有機溶剤なども表面を変質させてしまうおそれがあるため使うべきではないでしょう。
◆金属
柔らかい布に水で薄めた中性洗剤を含ませ、優しく汚れを取り除いていきます。サビに強いステンレス銘板であっても、酸性雨の影響や農薬などの薬剤が付着するとサビが発生することもあります。クレンザーなどの研磨剤は適しませんが、金属専用の磨き液が市販されているので、そういった商品を使ってサビを取ることは有効です。
ステンレス以外の金属銘板は、サビ防止の為に表面に塗膜でコーティングされている場合があります。硬い道具で強く拭き過ぎるとこの塗膜が剥がれてサビの原因になることがあるので、注意が必要です。銘板表面にヘアライン加工がされている場合は、ラインの目地に沿って拭き上げるようにしましょう。
◆石
サビが発生することはないため、基本的には柔らかい布で水拭きするか、中性洗剤で綺麗にすることができます。掘り込み部分など微細な凹凸に雨の水垢や汚れが入り込んでしまっている場合は、タイルの目地を掃除するように柔らかいブラシで優しく洗いましょう。洗剤を使う場合、必ず最後に水拭きをして洗剤が表面に残留しないよう注意してください。
◆ガラス
窓ガラスと同じように市販のガラスクリーナーを使って掃除することができます。取り外すことができる場合は、表面の埃を落としてからぬるま湯で優しく洗うようにするとキズを付けずに汚れを除去できます。表面に微細なキズが入ると美観が大幅に損なわれますので、特にデリケートな扱いが必要です。
アクリル製の銘板においても同様のお手入れができますが、樹脂製のため特にアルコールや脱脂系洗剤には絶対に触れないようにしましょう。白く劣化してしまうおそれがあります。
◆木材
湿気を含ませるとカビの原因になるため、出来るだけ乾いた布を使ってお手入れをしましょう。どうしても汚れが落ちない場合は、ぬるま湯に浸した布をかたく絞って表面を優しく拭くようにします。木材の場合保護塗料の塗り直しが必要な場合もあるため、業者に相談することも有効です。
◆陶器
基本的には石製銘板と同様の方法でお手入れができます。陶器の中には表面にガラス質の釉薬が塗られているものがありますので、釉薬を剥がさないように丁寧に拭き取る必要があります。中性洗剤を使用する場合は表面をしっかり水拭きするようにしましょう。
まとめ
アパート・マンションに設置する看板に関する基礎知識についてご紹介してきました。要点をまとめますと以下の通りです。
・看板(銘板)に使われる素材や加工方法にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる魅力を持っている ・銘板の設置場所によっても来訪者に与える印象が異なるため、適切な場所への設置が重要 ・看板は自治体の定める『屋外広告物』に該当する可能性があり、設置には許可申請が必要 ・製作設置だけでなく申請手続きの依頼も含めて、信頼できる業者選びが大切になる ・銘板の材質や加工方法によってお手入れの注意点も異なる |
銘板はアパートやマンションと一生を共にする大切な部分です。効果的かつ長期的に使っていくためにも、正しい銘板の選び方の参考となれば幸いです。